経営革新等支援事業への取り組み

経営革新等支援機関の動向と高まる税理士への期待

2012年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、これに伴い、中小企業・小規模事業者に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)を認定する制度が創設されました。

現在、1万7445機関が認定されており、その7割以上を税理士・税理士法人が占めています。

 

認定支援機関となる税理士とその顧門先企業のメリットとは

認定支援機関の制度は、税務、金融および企業財務に関する専門的知識や中小企業支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を国が認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。

認 定支援機関の主たる役割は、中小企業の財務その他の経営状況について、調査・分析し、経営改善等の事業計画の策定や実行支援、その後のフォローアップを行 うことです。そうした中で、表1のとおり、認定支援機関制度と連携した補助・事業・税制等の施策ツールの整備も進められています。

中小企業経営力強化支援法が施行されてから1年以上が経ちます。税理士会の会員が7万人超ですので、認定支援機関となっている税理士の比率は20%弱に留まっていると推計されます。

また、経営改善の支援実績についても十分とは言えないため、今後、本認定制度が機能するか否かは、税理士の先生方のご活躍にかかっていると言っても過言ではありません。

 

<表1>認定支援機関を活用することで、中小企業が受けられる支援制度

種類 名称 支援内容
融資 経営力強化保証制度 中小企業が外部の専門家(金融機関、認定支援機関〕の支援を受けつつ、経営改善に取り組む場合に信用保証協会の保証料を減免(概ねAO.2%)
融資 中小企業経営力強化資金 経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により、市場の創出・開拓(新規開業含む)を行おうとする事業者で、認定支援機関の指導やアドバイスを受けながら、自ら事業計画の策定を行っている場合に、目本政策金融公庫等から特別利率で受けられる融資
融資 経営支援型セーフティネット貸付(経営環鏡変化対応資金) 一時的に資金繰りが悪化している事業者が、日本政策金融公庫等から設備投資と運転資金に限り受けられる融資。運転資金による利用で、認定支援機関の支援を受けている場合、基準利率が最大▲0.6%下がる
融資関連 借換保証制度 認定支援機関の支援を受けて経営改善に取り組む場合、経営力強化保証を中心に、信用保証協会の保証を利用した複数の借入債務を一本化し、月々の返済負担を軽滅
補助 経営改善計画策定支援事業 認定支援機関が経営改善計画の策定を支援し、中小企業・小規模事業者が認定支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及びフォローアップ費用について、経営改善支援センターが3分の2(上限200万円〕を負担する
補助 創業補助金制度 認定支援機関の支援を受け、起業・創業、第二創業を行う者か、その創業事業費等に要する経費の一部を補助する
補助 ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金 きめ細かく顧客二一ズをとらえる創意工夫に取り組むために、認定支援機関等と連携しつつ、ものづくり中小企業・小規模事業者が実施する試作開発や設備投資等を支援
税制 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 青色申告書を提出する中小企業者等において認定支援機関等から経営改善に関する指導および助言を受けている場合、「建物附属設備」で60万円以上、「器具及び備品」で30万円以上の設備取得価格のうち、30%の特別償却または7%の税額控除を受けることができる

 

なお、認定支援機関は、技術、知財管理、海外展開等をはじめ、さまざまな分野の専門家の派遣を受けられることから、中小企業・小規模事業者は専門性の高い支援を受けられます。

※詳細は、各地の地方経済産業局担当課までお問い合わせください。

税理士会の全会員が認定支援機関となり、中小企業経営者を支えるべき

本 認定制度において、国は税理士の職能を重視し積極的な参加を求めています。日税連としても、認定支援機関を担うのは税理士が最も相応しいと考えています。 中小企業経営者の約7割が、最も信頼できる相談相手に税理士を挙げるという調査結果もあるように、私たち税理士は顧問先にとって最も身近な存在であり、よ き理解者であり、これまでも経営者のさまざまな相談に親身に応えてきました。また、税理士は日常業務の中で、資金繰り表や経営計画の策定指導を行っている ため、認定支援機関が行う業務は、税理士の日常業務の延長線上にあり、決してハードルの高いものではないと思います。

従って、日税連として は、ある特定の税理士だけではなく、全会員が認定支援機関となり、より効果的な方法で中小企業を支援していくことが好ましく、それにより、税理士が「中小 企業の税務・財務・金融・経営支援の担い手」として対外的に認められれば、更なる業界の発展につながると考えています。但し、本質的には税理士の業務拡大 というよりも、顧間先の経営を守ることに大きな意義があると考えます。

 

正しい会計ルールに基づいた決算書が大前提

日 税連では、今年7月に中小企業対策特別委員会を立ち上げました。本委員会は、中小会計指針や中小会計要領・会計参与・認定支援機関の普及促進を目的として います。特に、認定支援機関に関しては支援実績の事例情報が少ないので、金融機関や信用保証協会、日本政策金融公庫、経営改善支援センターなどと連携しな がら情報収集に努め、会報や研修を通して、会員の皆様方に有益な情報発信を行い、認定支援機関への登録促進や各種施策の活.用を促していく予定です。

一 方、経営改善計画書の作成において重要なことは、中小会計指針や中小会計要領などの正式な会計ルールに基づいた決算書を活用することです。これにより、計 算書類の信頼性が高まると同時に、会社の実態を正確に反映した財務情報を基に経営計画書を策定することが可能になります。その結果、企業の継続的発展、経 営力向上、資金調達力の向上につながるのです。

 

皆で協カして「孤独な経営者」を支援する

会員 の支援実績については、現在調査中ですが、現状、経営改善よりも創業補助金に関する実績の方が多くなっているようです。その背景としては、金融機関が中小 企業円滑化法が終了してからも、借入金返済条件のリスケに柔軟に応じていることなどが考えられますが、この状況もいずれは変化してくるはずです。だからこ そ、私たち税理士が認定支援機関として、中小企業を多角的に支援できる体制を整えておく必要があるのです。

中小企業の経営者は、厳しい経営環境の中でさまざまな経営判断を求められ、孤独を感じる方が多いようです。

私たち税理士は、地域金融機関や他の専門家の方々をはじめ、皆で協力して孤独な経営者を支えていくことが大切です。

本 認定制度における課題や問題点については、必要に応じて中小企業庁に意見を述べています。今後、地域金融機関や信用保証協会、日本政策金融公庫、経営改善 支援センターなど、さまざまな方々との連携を深め、税理士が認定支援機関として、中小企業の経営改善に寄与できる環境づくりに貢献したいと考えています。

平成25年12月16日 瀬上 富雄

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