中小企業会計指針と会計要領

1.概要

 日本の経済状況が多様化、複雑化する中、創業者に求められているのは経営力を発揮できる能力です。そのためには、自社の経営状況を理解し、金融機関等の外部関係者に対して情報を提供し説明できる能力であり、中小企業の会計について理解することが必要不可欠です。

 そのために必要なのは、中小企業の会計ルールを理解することです。中小企業の会計ルールは中小企業の会計に関する指針(以下「中小会計指針」という。)と中小企業の会計に関する基本要領(以下「中小会計要領」という。)の2つのルールがあります。

2.中小企業の会計に関する指針

 会計学を学習する場合、企業会計原則をベースに学習します。しかし、金融商品に関する会計基準、退職給付金会計、税効果会計、減損会計、キャッシュフロー計算書など、次々と新しい会計基準が公表され、上場会社などでは新しい基準にしたがった会計処理が要求されています。

 中小企業の立場からすると、上場会社と同じルールで会計処理を行うこと自体が、現実的に難しいという側面と、会計目的に照らし合わせると合理的でない側面があります。

 しかしながら、会社法第431条及び第614条において「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うものとするとされているとともに、会社計算規則の定めるところにより、適時に正確な会計帳簿の作成と計算書類の作成が義務付けられています。 中小企業の会計に関する指針は、中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものとして位置付けられます。

 中小企業等は、本指針に拠り計算書類を作成することが推奨されます。また、会計参与が取締役と共同して計算書類を作成するに当たって拠ることが適当な会計のあり方を示すものとして位置付けられています。

 計算書類・・・貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書   及び個別注記表等

 

3.中小企業の会計に関する基本要領

 中小会計要領は、中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため、中小企業が会社法上の計算書類を作成する際に、参照するための会計処理や注記等を示すものとされています。

 中小会計要領は、中小会計指針によることを求めることが必ずしも適当でない中小企業を対象にとして、実態に即した会計処理のあり方を取りまとめるとの意見を踏まえて作成されたもので、内容的には中小会計指針とも整合性が図られており、中小企業が拠るべき会計基準として不都合はないものとなっています。

 創業時には、中小会計要領を参考に計算書類等を作成するという判断でよいと考えられます。また、創業時だけでなく、上場を考えていないような法人であれば、中小会計要領による会計処理で、十分に経営成績と財政状態を表示する計算書類が作成できます。 中小会計要領は、次の考えに立って作成されています。

  •  中小企業の経営者が活用しようと思えるよう、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計
  •  中小企業の利害関係者(金融機関、取引先、株主等)への情報提供に資する会計
  •  中小企業の実務における会計慣行を十分考慮し、会計と税制の調和を図った上で、 会社計算規則に準拠した会 計算書類等の作成負担は最小限に留め、中小企業に過重な負担を課さない会計

 

4.中小会計指針と中小会計要領の位置づけ

  中小会計指針は会計参与設置会社が拠ることが適当とされる点において、一定の水準を保った規範的なものと位置付けられています。一方中小会計要領は、中小会計指針に比べて簡便な処理をすることが適当とされる中小企業を対象としています。 したがって、中小会計要領は中小会計指針の入門編として位置付けることができます。

  中小会計指針では、退職給付費用、税効果会計などの処理が取り入れられており、資産除去債務の計上についても検討項目とされています。金額計算の方法については、簡素な方法を認めていますが、会計処理の考え方としては、高度な内容となっており、成長発展を考える企業は、中小会計指針は拠るべき会計基準として重要な意味を持っています。

 しかし、多くの中小企業にとって中小会計指針は項目も多く複雑で理解しにくいという声が聞かれます。多くの中小企業が中小会計指針を適用できず、また拠るべき会計基準をもたないままでいることは好ましいことではありません。

 この点、中小会計要領は、法務省等から会社法第431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に該当するとの見解は得られていないものの、内容的には中小会計指針とも整合性が図られていますし、中小企業が拠るべき会計基準として不都合はないものとなっています。 中小会計指針を適用していない会社や適用が困難な会社が、中小会計要領に拠ることができれば、中小企業全体の会計水準が向上すると考えられています。

5.中小会計指針と中小会計要領の利点

  中小会計指針や中小会計要領に基づいた会計処理をすることで適正な計算書類等が作成され、経営者が自社の経営状況を理解し、金融機関等の外部関係者に対して情報を提供し説明できることで会社の成長に繋がるとともに、金融機関からの融資も可能となります。

 会社が中小会計指針や中小会計要領に基づいた会計処理を行っているか否かのチェックリストを提出することで、金融機関は提出された計算書類等が適正な会計基準に準拠しているか否かを容易に判断することができます。

  そこで、そのような中小会計指針又は中小会計要領を普及する趣旨から、中小企業等施策として、一定の場合に優遇貸出制度や保証料率を割引制度など次のような金融商品を用意しています。

平成28年1月 瀬上富雄

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