会計ソフトを利用した帳簿作成

1. 記帳を行う際のパソコンの利用状況

 平成24年度中小企業の会計に関する実態調査によると、記帳を行う際のパソコンの利用状況についての質問に対して、「パソコンを使用して記帳している(パソコン利用)」が 76.5%と最も多く、次いで「パソコンを使用しないで記帳している(手書き)」が20.8%の順となった。

 また、記帳を行う際の会計ソフトの利用の有無について質問したところ、「利用している」が 69.4%であり、会計ソフトの利用が進んできていることがわかる。また会計ソフトの利用状況についての質問では「会計事務所が推奨する会計ソフトを利用している」が 46.1%と最も多く、次いで「市販されている会計ソフトを利用している」 が45.3%の順であった。

 自社の経理財務に関する状況についての質問に、「日常取引(現金、売掛金、買掛金等)の記帳までは社内で行い、決算特有の仕訳等の処理以降については会計専門家等に外注している(日常取引の記帳までは自社で記帳している)」が 28.3%と最も多く、社内では領収書等の作成・保管や伝票の起票までを行うが、記帳は社内では行わず会計専門家等に外注している会社は 26.5%であった。中小企業における経理事務の実態は、会計帳簿の記帳も十分には行えず、会計ソフトを導入してはいるものの税理士等に委託するケースが多いのが実情のようです。

 一方、「財務諸表の作成まで一貫して社内で行っており、税務申告については会計専門家に外注している」が20.1%、「総勘定元帳までの作成を社内で行い、財務諸表(貸借対照表、損益計算書等)の作成に係る残りの処理と税務申告については会計専門家等に外注している」が16.8%となっており、かなり自計化が進んできている。

 会計ソフトを利用して経理事務を行いたいと考えている創業者は、かなり多いものと思われますので、会計ソフト導入のメリットと機能、そして留意点を説明することが必要です。

 

2. 会計ソフトのメリットと機能

 会計ソフトを導入するメリットは、まず、帳簿作成の作業時間や手間を大幅に減らすことができることにあります。次に、自社の経営状態や財産状況をリアルタイムで把握できることにあります。会計ソフトを導入して経理業務を行えば、月次試算表などの書類をすばやく作成することができるわけです。

手書きで記帳する場合には、各取引を次のような手順により経理手続きを行います。

① 発生取引の発生を証明する原始証憑を整理・保管します。
② 記録全ての取引を発生した順に、勘定科目によって「借方」、
「貸方」に分別し、取引仕訳を伝票(入金伝票、出金伝票、
振替伝票)に起票します。
③ 記帳伝票より元帳に転記します。また、補助簿へも転記します。
補助簿には、現金出納帳、銀行預金出納帳、受取手形記入帳、
支払手形記入帳などの補助記入帳と売掛金元帳、
買掛金元帳、固定資産台帳などの補助元帳があります。
④ 集計
元帳を集計して勘定科目ごとの金額を算出して試算表を
作成します。
⑤ 報告計算書類等(いわゆる決算書)を作成します。

ところが、会計ソフトを導入すれば、「② 記録」の作業、つまり各取引の仕訳を会計ソフトに入力する作業だけで、「③ 記帳」から「⑤ 報告」までの経理事務が自動的に行えます。また、会計ソフトへの入力作業についても、会計ソフトの機能をうまく使うことにより、手間と時間を短縮することも可能です。例えば、頻繁に出てくるような取引について、あらかじめ会計ソフト上に仕訳を登録して置くことで自動的に転記するということもできます。

会計ソフトの機能

経理事務の手続き(取引の仕訳・仕訳帳・総勘定元帳・試算表・計算書類等)を パソコン上で操作することができます。
計算書類等(決算書(貸借対照表,損益計算書、個別注記表など)、資金繰り表、キャッシュフロー計算書など)を作成、印刷することができます。
試算表など財務資料を作成することができ、財務分析を支援する資料を作成、印刷することができます。
会計ソフトのデータを、表計算ソフトなどで利用できます。

3. 会計ソフトを利用した場合の留意点

 会計ソフトを利用するとしても、経理事務の基本的な考え方を理解してもらう必要があります。つまり、取引の各手順(発生、記録、記帳、集計そして報告)の流れを理解してもらうことが大切です。

取引の発生時に、原始証憑(請求書、領収書など)を整理・保存することは大切です。原始証憑の整理・保存は会社法や税法で義務付けられていますし、基本帳簿である現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳の記帳は青色申告の要件となっています。また、決算書、申告書、総勘定元帳なども保存が義務付けられています。    

会計ソフトを利用して取引を記録・記帳しても、その記録・記帳が間違っていては正しい計算書類はできません。毎月、税理士等が確認し記録・記帳が正しくできているか、どこがどのように間違っていたのか、を確認する必要があります。これを繰り返すことで正確な記録・記帳ができるようになります。

また補助簿の記帳は会計ソフトのデータとは別に記録・記帳し、会計ソフトのデータと補助簿の残高とを照合することにより、記録・記帳が正しく行われていたことが確認できます。特に、売掛帳、買掛帳は必ず記録・記帳するように指導しましょう。取引先や仕入れ先との取引を正確に記録・記帳することは、トラブルを防止するとともに、互いの信頼性を高める効果もあります。

取引を集計し試算表・分析表などの経営資料を毎月作成することで、経営状態と財産状況が把握できます。また予算対比や前年度比較など行うことにより目標管理ができます。

平成28年6月 瀬上富雄

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