帳簿等の記帳と書類の保存は経理の基本

1.帳簿等への記帳の重要性を理解しよう

 帳簿等の記帳は事業活動にともなう資金の流れを把握するためにあります。事業の実態を数字できちんと把握することは、正しい決算書の作成、適正な申告とつながるとともに、事業経営の合理化・効率化等の検討にも役立つものです。

 創業者は、自社の利害関係者である地域金融機関や得意先等への情報提供が求められることがあります。その際、会社法上の計算書類等を作成提示し、利害関係者である地域金融機関や得意先等に自社の経営状況についてを説明をすることになります。

 そのためには、「中小企業の会計に関する指針」、「中小企業の会計に関する要領」に拠った計算書類等の作成が必要となります。その根底にあるものが正確な会計帳簿の作成であり、事業活動の一切の取引を請求書や領収書その他証憑書類等に基づく正しい記帳である必要があります。

 そして、創業者及び経理担当者に対して、会社が作成しなければならない現金出納帳、売掛帳、仕入帳など帳簿等の記帳と書類の保存について指導し、支援することが必要です。

 現在、中小企業の経理財務担当者の数は、0人が12.2%、1人が58.2%となっており(下記図表参照 平成26年度 中小企業における会計の実態調査)、特に創業時には、経理事務を創業者自らが行うか、配偶者又は経理担当者1人で行うか、であることが多いので、会社と事務所で経理事務をシェアすることになります。

経理担当者数

 その際に有効なツール「自主点検チェックリスト(入門編)」です。(詳細は、1.自主点検チェックリストの活用

なお、創業者又は経理担当者に帳簿等の記帳の仕方を指導する際には、「帳簿の記帳の仕方-事業所得者用-」が国税庁から公表されていますので、参照してください。

2.帳簿記帳と請求書、領収書等の保存は青色申告の要件です。

 税務においては、1年間に生じた所得金額を正しく計算し申告するために、収入金額 や必要経費に関する日々の取引の状況を記帳し、また、取引に伴い作成したり受け取ったりした請求書や領収書その他証憑書類等を保存しておく必要があります。
 一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる青色申告制度を選択することができます。

 青色申告制度の要件である「一定水準の記帳」とは、貸借対照表と損益計算書を作成することができるような「正規の簿記」によることが原則とされていますが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいとされています。

 しかし、簡易帳簿では記帳されない預金、手形その他の債権債務で必要な勘定科目については、新たに帳簿等を備え付けて、すべての取引を整然と記録することが望まれます。

帳簿名内容
現金出納帳事業用の現金の出し入れの状況を、取引順に記入する帳簿です
売掛帳得意先ごとに口座を設け、商品などの掛売りや、売掛金の回収の状況を記入する帳簿です
買掛帳仕入先ごとに口座を設け、商品などの掛買いや、買掛金の支払の状況を記入する帳簿です
経費帳仕入以外の事業上の費用を租税公課、水道光熱費、旅費交通費、給料賃金などの科目ごとに口座を設けて記入する帳簿です
固定資産台帳事業用の減価償却資産や繰延資産について、原則として個々の減価償却資産ごとに口座を設け、資産の取得及びその異動に関する事項などを記入する帳簿です

中小企業・小規模企業が会社法上の計算書類等を作成する際に、参照するための会計処理や注記等を示す「中小企業の会計に関する要領」の総論の中も、記帳の重要性について記載されています。

<記帳の重要性>

経営者が自社の経営状況を適切に把握するために記帳が重要である。他の企業会計原則とは別に記載。記帳は全ての取引につき、正規の簿記の原則に従って行い、適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成しなければならない。

3.請求書、領収書等の保存期間があります

 請求書、領収書等の保存も重要ですので、創業者には請求書、領収書の保存期間を理解してもらうことも必要です。

〇 個人経営の場合に、青色申告者の帳簿書類の保存期間は以下のとおりです。

保存が必要なもの保存期間
帳簿現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳、仕訳帳、総勘定元帳など
7年
書類
決算関係類損益計算書、貸借対照表、棚卸表など7年
現金預金取引等関係書類領収証、小切手控、預金通帳、借用証など7年
(※)
その他の書類取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など)5年

(※)前々年分所得が300万円以下の方は、5年

〇 法人の場合は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限から七年間保存しなければなりません。

 ただし、平成23年12月税制改正により青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越期間が九年とされたことに伴い、平成20年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度においては、帳簿書類の保存期間が九年間に延長されています。

 また、平成27年度税制改正により、平成29年4月1日以後に開始する欠損金額の生ずる事業年度においては、帳簿書類の保存期間が10年間に延長されています。

平成28年8月 瀬上富雄

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