取引先の倒産リスクへの対応 経営セーフティ共済制度

1.取引先の倒産リスクに備えることの重要性

 会社にとって資金が枯渇することがないようにすることが経営の基本であることは、言うまでもありませんが、会社経営の危機に陥る最大のリスクは、取引先の倒産であり、取引先の倒産のリスクをいかに回避しあるいは、その影響を軽減するように工夫することが重要なことです。 そのため、日々の売掛債権に対する与信管理も重要ですが、保険により万が一に備えることも重要です。

 独立法人中小企業基盤機構が運営する経営セーフティ共済制度の概要は、取引先事業者の倒産に直面した際の資金繰り不足への迅速な資金調達の手段として、中小企業倒産防止共済法に基づいたもので、独立法人中小企業基盤機構が運営しています。なお、中小企業のセーフティネット機能の強化や制度の魅力向上を図るために、平成22年7月から共済事由の拡大、平成23年10月から貸付限度額の引上げ(3,200万円から8,000万円)、掛金月額の上限の引上げ(8万円から20万円)などが実施されました。

2.メリット

(1)税制上のメリット

 経営セーフティ共済掛金の月額は、5,000円から20万円までの範囲(5,000 円単位)で自由に設定することができ、税法上のメリットとしては、払い込んだ掛金(後述の前納を含む)は法人の場合は損金、個人の場合は必要経費に算入することができます。なお、不動産所得等を兼業している個人事業者の場合、事業所得以外への必要経費算入は認められません。(4.の加入資格 参照)

 また、経営セーフティ共済の掛金は前納に関する手続きをすれば、将来払い込む掛金をまとめて一括で払い込むこともでき、1月につき掛金月額の1,000分の5の前納減額金が発生します。

(2)共済金の貸付け (取引先事業者が倒産への対処)

 経営セーフティ共済に加入していると、取引先事業者が倒産したことにより売掛金債権等(売掛金債権と前渡金返還請求権の額)の回収が困難となった場合に、無担保、無保証人で、共済金の貸付けを受けることができます。

①倒産の事態

 取引先事業者の「倒産」とは、以下の事態が取引先事業者に生じることをいいます。なお、取引先事業者に倒産の事態が複数発生している場合には、共済契約者が、売掛金債権等の回収が困難と判断した最初の倒産の事態(共済事由)が「倒産日」となります。この「倒産日」から6ヶ月を経過した場合には共済金の貸付請求を行うことはできなくなります。

倒産の事態倒産日
法的整理破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始の申立てがされること申立てがされた日
取引停止処分手形交換所に参加する金融機関によって取引停止処分を受けること取引停止処分の日
私的整理債務整理の委託を受けた弁護士等によって、共済契約者に対し支払いを停止する旨の通知がされること通知がされた日
災害による不渡り甚大な災害の発生によって、手形交換所で取引できる手形等が「災害による不渡り」となること当該手形等の手形交換日または呈示日
特定非常災害による支払不能特定非常災害により代表者が死亡等した場合に、弁護士等によって、共済契約者に対し支払いを停止する旨の通知がされること通知がされた日

 ただし、取引先事業者の倒産が、加入後6ヶ月未満に生じたものであるとき、加入から取引先事業者の倒産日までに、6ヶ月分以上の掛金を納付していないとき、貸し付けることができる共済金の額が少額であるとき、など共催貸付けを受けられない場合があります

② 貸付限度額

 共済金の貸付けは、取引先事業者の倒産で回収困難となった売掛金債権と前渡金返還請求権の額と掛金総額の10倍に相当する額のいずれか少ない額の範囲内で請求することができます。

 貸付額は原則として、50万円から8,000万円で5万円単位の額となります。
 なお、取引期間が1年以上ある主要取引先(売上高の20%以上を占める取引先)が倒産した場合は、回収困難となった売掛金債権等の額に、一定金額を加算することができます。

③ 返済期間

 返済期間は、貸付額に応じて次のとおりです。なお、6ヶ月の据置期間が含められています。

貸付額返済期間
(6ヶ月の据置期間含む)
5,000万円未満5年
5,000万円以上6,500万円未満6年
6,500万円以上8,000万円以下7年

④ 貸付利率、返済方法

 6ヶ月の据置期間の後、返済期間が5年の場合は54ヶ月、6年の場合は66ヶ月、7年の場合は78ヶ月の均等分割により毎月返済します。

 なお、共済金の貸付けは無利子です。返済期日までに共済金の返済がないときは、年14.6%の違約金が課せられることになります。

(3)一時貸付金(一時的な事業資金不足への対応)

 取引先事業者が倒産していなくても、共済契約者の方が臨時に事業資金を必要とする場合に、解約手当金の95%を上限として貸付けが受けられる制度です。

① 貸付限度額

 一時貸付金の貸付限度額は、30万円以上(5万円単位)、解約手当金の95%の範囲内です。すでに貸付けを受けている共済金や一時貸付金がある場合は控除されます。

掛金納付月数一時貸付金の貸付限度額
1ヶ月~11ヶ月0円
12ヶ月~23ヶ月掛金総額 × 75% × 95%
24ヶ月~29ヶ月掛金総額 × 80% × 95%
30ヶ月~35ヶ月掛金総額 × 85% × 95%
36ヶ月~39ヶ月掛金総額 × 90% × 95%
40ヶ月以上掛金総額 × 95% × 95%
掛金総額が800万円の場合800万円 × 100% × 95%
(760万円)

②返済期間、返済方法

 返済期間は1年で、返済期限に一括償還となっています。 なお、返済期日までに一時貸付金の返済がないと、年14.6%の違約金が課せられます。

③貸付利率

 一時貸付金の貸付利率は金融情勢に応じて変動し、一時貸付金の利息は貸付けの際に、一括で前払いとなります。なお、平成23年4月1日以降に中小機構が受け付けた一時貸付金については、「年0.9%」となっています。

3.共済掛金

(1)支払方法

 経営セーフティ共済掛金の支払いは預金口座振替での払込みなります。

(2)掛金の掛け止め

 経営セーフティ共済掛金は掛金総額が800万円になるまで積立てができます。

 掛金総額が掛金月額の40倍以上に達している場合、掛金の払込みを止めることができます。また、共済金の貸付けを受けた場合も、6ヶ月間、掛金の払込みを止めることができます。なお、掛金の掛止めには手続きが必要となります。

(3)掛金の減額

 掛金は、最低5,000円まで減額することができます。

 ただし、掛金の減額は特定の要件(共済契約者の事業規模が縮小されたとき、事業経営の著しい悪化、病気または怪我、急な費用の支出などにより、掛金の納付を継続することが著しく困難であるときなど)に限定されていますので留意する必要があります。

4.加入資格

(1)会社または個人の事業者

  次表の各業種において、「資本金の額または出資の総額」、「常時使用する従業員数」のいずれかに該当する会社または個人の中小企業者

業種資本金の額
または
出資の総額
常時使用する
従業員数
製造業、建設業、運輸業その他の業種3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下
ゴム製品製造業
(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ
製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。)
3億円以下900人以下
ソフトウェア業または情報処理サービス業3億円以下300人以下
旅館業5,000万円以下200人以下

(2)組合

 次のいずれかに該当する組合

次のいずれかに該当する組合
企業組合、協業組合
共同生産、共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

 なお、上記に該当しない法人や組合(医療法人、農事組合法人、NPO法人、森林組合、農業協同組合、外国法人など)は加入対象になりません。

平成28年10月 瀬上富雄

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