社会保険制度加入のすすめ

1.社会保険制度への加入

 公的な社会保険制度(広義)には、労働保険(労災保険と雇用保険)と社会保険(狭義)(医療保険、介護保険、年金保険)があり、国民皆保険制度であることから勤務先が社会保険(狭義、この場合は健康保険、介護保険及び厚生年金)に加入していない場合には、国民健康保険(又は後期高齢者医療制度)と国民年金に加入することになっています。

 広義の社会保険制度は、国民(被保険者)の生活保障の一つとして、疾病・老齢・負傷・失業・死亡など生活を脅かす事由が発生した時に、社会保険の補償範囲に従って、一定基準の給付を行う公的な保険制度です。

 法人・個人を問わず、労働者を雇用すれば労災保険には加入しなければなりませんし、法人であれば労働保険だけでなく社会保険(狭義)にも加入する義務があります。

 今までは法人であっても社会保険に加入をしていないところは多々見受けられました。

 しかし、社会保険に加入した場合、保険料の負担は大きなものでも、法令遵守の観点からも社会保険に加入することを進めましょう。

 社会保険に加入していることは、従業員から見れば大きな判断要素となり、優秀な人材を確保するためにも加入するメリットがあります。

<社会保険の補償範囲>     
制度名 内   容
補償範囲









労災保険業務上と通勤による保険事故
介護保険加齢による要介護状態
雇用保険失業状態や雇用継続が困難な事由による総合的対応
健康保険民間の労働者の業務外の保険事故
国民健康保険市町村の住民(適用除外者を除く)の保険事故
後期高齢者医療保険70歳以上の保険事故
厚生年金民間の労働者の年金制度
国民年金国民の年金制度

2.社会保険(健康保険と厚生年金保険)の加入義務

 社会保険の強制加入の事業所は、次の1か2に該当する場合に事業所となります。

 社会保険の適用事業所に該当する場合には、事業主や従業員の意思に関係なく、健康保険・厚生年金保険への加入が義務付けされております。                      なお、事業所で労働者の半数以上の人が適用事業所となることに同意し、事業主が申請して社会保険事務所長等の認可を受けると「任意適用事業所」になることができ、労働者全員が加入することになります。

1.個人事業所の場合、原則として、常時5人以上の従業員を使用する事業所
ただし、農林業、水産業、飲食業やホテル、利用・美容・レジャー業等のサービス業には加入義務がありません。
2.法人の事業所の場合は、従業員を使用する全ての法人の事業所(国、地方公共団体を含む)に加入義務があります。なお、法人の事業所では代表取締役や役員も加入の対象となります。

 事業所が加入していない場合には、国民健康保険や国民年金へ加入することになり、被扶養者の加入制度もありません。また、病気等で仕事ができない間の傷病手当が受けられない等の不利益が考えられます。

3.健康保険と国民健康保険の違い

(1)運営主体

 健康保険は、全国健康保険協会が運営をしている「協会けんぽ」と企業グループで独自に組合管掌健康保険を運営する「組合健保」があります。

国民健康保険は、お住まいの市区町村が運営しています。

(2)保険料の違い

 健康保険の保険料は、標準報酬月額に応じて決められます、この標準報酬月額に保険料率(協会けんぽは都道府県毎、組合健保は加入組合毎に異なります)をかけた金額となっています。なお、この金額を会社と従業員で半分ずつ負担することになります。

それに対して国民健康保険料の計算は、医療分、後期高齢者支援金分と介護分(40歳以上65歳未満)の3つの合計額からなり、それぞれについて、所得割・資産割・均等割・平等割の4つの算定方式から保険料を算出するもので、かなり複雑であり市町村ごとに異なる算定方式を採用しています。

なお、保険料の最高限度額が定められていて、市町村ごとにより異なりますが、89万円(平成27年度)と定められています。

※健康保険の保険料につきましては、半額を会社が負担しますので、原則、従業員負担の保険料は国保や国民年金に支払う額の合計とあまり変わりません。扶養者が多いほどお得になると思われます。

(3)被扶養者

 健康保険は、「労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与すること」を目的としています。  したがって、労働者だけでなくその被扶養者も疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関する保険給付を受けることができます。

4.厚生年金保険と国民年金保険の違い

(1)国民年金と厚生年金の対象者

 公的年金には、3種類あり、日本国内に住所のあるすべての人が加入を義務づけられています。その人の働き方により加入する年金制度が決まっています。

制度 内容
国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人
厚生年金 厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人
共済年金 公務員・私立学校教職員など

 国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人に加入するもので、老齢・障害・死亡により「基礎年金」を受けることができます。

 国民年金には、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」と3種類があり、どの制度に加入するかにより、保険料の納め方が異なってきます。

被保険者 対象者と保険料の納付方法
第1号被保険者 (対象者)自営業者、学生、フリーター、無職の人など。
(保険料の納付方法) 納付書による納付や口座振替など、自分で納めます。
(納められないときは、免除や納付猶予の仕組みがあります。)
第2号被保険者 (対象者) 厚生年金保険の適用を受けている事業所に勤務する者であれば、自動的に国民年金にも加入します。(ただし、65歳以上で老齢年金を受ける人を除きます。)
(保険料の納付方法) 国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれますので、厚生年金をかける人は自動的に国民年金にも加入することになります。厚生・共済各制度が、国民年金制度に基礎年金拠出金を交付します。
第3号被保険者 (対象者)
第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の人をいいます。ただし、年間収入が130万円以上で健康保険の扶養となれない人は第3号被保険者とはならず、第1号被保険者となります。
(保険料の納付方法)
負担なし(配偶者が加入する年金制度が一括負担します。)

 国民年金と厚生年金とは、いわゆる2階建ての構造になっていて、下の図のように、第1号被保険者及び第3号被保険者は国民年金のみに加入し、第2号は(国民年金)+(厚生年金)に加入することになります。

 保険給付を受ける際には、厚生年金を納付している場合は、加入していた期間分だけ厚生年金分が上積みされます。

 また、国民年金基金は厚生年金に加入できない自営業者などに対し、厚生年金に代わる年金制度として運営されています。

(2)保険料

厚生年金保険の料率は、全国一律で平成29年度まで毎年9月に引き上げられ、最終的な料率は18.3%となるようです。厚生年金保険の保険料は、事業主と従業員とで半分ずつ負担します。国民年金保険の料率は、第1号被保険者の場合、平成29年まで基本的に毎年増額されることが予定され、最終的には月額1万6900万円で固定となる予定です。

 第2号被保険者と第3号被保険者は国民年金保険料を直接納付する必要ありません。

 

(3)保険給付の種類

 厚生年金法に基づき、一般企業の労働者が加入する制度で「労働、老齢、障害又は死亡による保険給付」を行い、厚生年金保険に加入している人は、厚生年金保険の制度を通じて国民年金に加入する第2号被保険者に分類され、国民年金の給付である「基礎年金」に加えて、「厚生年金」を受けることとなります。

厚生年金給付の種類は、次のとおりとする。

保険給付の種類 内容
老齢厚生年金 原則として65歳以上で、保険料納付済期間等が25年以上である者に支給
障害厚生年金及び障害手当金 障害者で一定の要件を満たす者に支給
遺族厚生年金 被保険者が死亡した場合などにその遺族に支給

 

(4)第1号被保険者の独自給付

 国民年金の第1号被保険者に対する独自給付として、付加年金や寡婦年金、死亡一時金があります。

種類 内容
付加年金  定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。
寡婦年金  第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が25年以上ある夫が亡くなった時に、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまでの間支給されます。
死亡一時金  第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった時、その方によって生計を同じくしていた遺族に支給されます。 死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円です。 付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算されます。

平成28年12月 瀬上富雄

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